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VEC療法
VEC療法は3種類の抗がん剤 (ビンクリスチン、エトポシド、カルボプラチン)、を組み合わせた治療法です。網膜芽細胞腫の約95%が5歳未満で診断されるため、この治療の多くは新生児から幼児を対象に行われています。
使用する抗がん剤
ビンクリスチン注
ビンクリスチンは、ニチニチソウという植物に含まれる成分から作り出された抗がん剤で、細胞が分裂する際に必要な細胞構成成分のひとつである微小管に作用します。微小管を構成しているチュブリンという蛋白質の結合を阻害することによって腫瘍細胞の増殖を阻害し、死滅させます。ビンクリスチンは、短時間で静脈内に投与します。ビンクリスチンを投与すると、手や足がピリピリするなどの異常な感覚、便秘 (便通がない、便が硬いなど)や腸閉塞 (お腹が痛む、お腹が張る、嘔気・嘔吐など)などの末梢神経障害が起こることがあります。上記のような症状が出た場合は、症状が軽いうちに医師、看護師または薬剤師に報告してください。
エトポシド注
エトポシドはメギ科の植物の根茎から抽出した結晶性成分であるポドフィロトキシンを原料とし、1966 年に初めて合成された抗がん剤です。二本鎖DNAのねじれを解消する酵素の働きを抑えることによって腫瘍細胞の増殖を阻害し、死滅させます。DNAの二本鎖はらせん構造をとっているため、そのひずみを解消しない限りDNAの複製ができないためです。間質性肺炎を引き起こすことがあるため、咳、息苦しさなどの呼吸器症状が見られた場合には、医師、看護師または薬剤師に報告してください。
カルボプラチン注
カルボプラチンは白金を含む化合物で、腫瘍細胞のDNAにくっつき、腫瘍細胞の増殖を止めたり、死滅させる作用を持つ薬です。カルボプラチンは、同じ白金製剤であるシスプラチンに比較して、悪心・嘔吐、腎機能障害の発現率が低く、また、聴器障害や末梢神経障害の発現が少ないとされています。骨髄抑制は、より強く見られるため注意が必要です。投与回数が増えてくると、頻度は高くありませんが、カルボプラチンが原因と考えられるアレルギー症状が報告されています。投与後に息苦しい、発疹が出る、胸が痛い、顔がほてるなどの症状が現れた時はすぐにお申し出ください。
VEC療法の副作用
骨髄抑制
抗がん剤を使用すると血液を造る骨髄も影響を受け、白血球、赤血球、及び血小板が減少することがあります。
白血球の減少 (感染症にかかりやすくなります)
白血球は、病原体から身体を守る (感染を防ぐ) 働きを持った血液成分の1つです。白血球が一定レベル以下に減少すると抵抗力が低下し、感染にかかりやすくなります。抗がん剤治療中は、感染予防策が大切です。また扁桃炎・虫歯・膀胱炎・おむつかぶれなどがある場合、治療開始前に担当医とご相談ください。
赤血球の減少 (貧血症状につながります)
めまい、立ちくらみ、冷え、だるさ、息切れ、動悸などの症状があります。
血小板の減少 (出血しやすくなります)
血小板は、血液を固まりやすくする働きがあります。血小板の数が少なくなると、出血しやすくなります。赤血球や血小板の輸血を必要とする場合があります。血液検査によって確認しますが、貧血症状が改善しない場合や出血傾向が続く場合は、早めに担当医へ連絡してください。
末梢神経障害
末梢神経には、運動神経、感覚神経、自律神経の3種類があり、私たちの日常生活で重要な働きをしています。どの神経の働きが悪くなるかによって現れる症状が異なります。
- 運動神経障害・・・「手や足の力が入らない」、「物をよく落とす」、「歩行がうまくできない」、「足先が垂れてつまずきやすい」など
- 感覚神経障害・・・ 手や足が「ピリピリとしびれる」、「ジンジンと痛む」、「感覚がなくなる」、「手袋やストッキングを着けているような感覚になる」など
- 自律神経障害・・・「便通がない」、「お腹が痛む」、「手や足の皮膚が冷たい」、「下半身に汗をかかない」など
吐き気・嘔吐
VEC療法では、吐気や嘔吐、食欲不振などの消化器症状が発現しやすいため、複数の吐気止め (注射薬と内服薬) を組み合わせて予防します。抗がん剤の点滴当日に現れる急性のものと、点滴終了後2から7日目に現れる遅発性のものがあります。吐気止めを使用して症状を和らげます。
脱毛
脱毛の程度に個人差はありますが、薬を点滴してから2週間から3週間が過ぎた頃より、髪の毛が抜けてきます。この脱毛は一時的なもので、治療を終了してから2か月から3ヶ月で髪が生え始めます。新しく生えてきた毛髪は、色や質が以前と変わることがあります
口内炎
VEC療法を行ってから1週間前後に現れることがあります。
その他、気になる症状がありましたら、 医師・看護師・薬剤師にご相談ください。