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大腸がんのステージ(病期)について
大腸がんの広がり、進行度は病期(ステージ)で表されます。大腸がんのステージは本邦で用いられる「大腸癌取扱い規約」と国際的に用いられる「TNM分類」の二つがありますが、共通点は多く、ここでは「大腸癌取扱い規約(第9版)」に準じた解説を行います。
進行度を表す5段階ステージ(病期)とは
大腸がんのステージは0から4までの5段階で表記されます。ステージはがんの壁深達度(T因子)、リンパ節転移(N因子)、遠隔転移(M因子)の3つの因子を組み合わせて決定され、簡潔にまとめると以下のようになります。
ステージ0 がんが大腸粘膜内に留まるもの
ステージ1 がんが固有筋層までに留まるもの
ステージ2 がんが固有筋層を超えて浸潤する
ステージ3 がんの深さに関わらず、リンパ節への転移を認めるもの
ステージ4 がんの深さやリンパ節転移に関わらず、他臓器への転移を認めるもの
大腸の壁にどれだけ深く入り込んでいるか(T因子)
ここではがんの壁深達度(T因子)について解説します。大腸は管腔臓器であり、壁は図のような層構造をとります。
図1:大腸がんの壁深達度(T)
腫瘍は大腸の内側(粘膜)から発生し、進行すると深部へ進展していきます。腫瘍最深部の深さに応じてT因子が変わります。腫瘍の壁深達度がT1(粘膜下層)までを早期がん、T2(固有筋層)以深を進行がんと定義しています。腫瘍が浅い位置にある早期がんは内視鏡治療の適応となることが多いですが、全ての早期がんが内視鏡で切除できるわけではありません。
T1は更に細分化するとT1a(癌が粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が1000μm未満)とT1b(癌が粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が1000μm以上)に分けられます。T1b以深になると腫瘍がリンパ管や血管を介して転移する可能性が出てくるため、基本的には内視鏡治療ではなく外科治療の適応となります。腫瘍の壁深達度は内視鏡での検査所見や、CT、MRIの画像所見から予測できますが、最終的には切除した組織を顕微鏡で検査する病理検査で確定診断となります。
具体的なT因子は以下の通りです。
TX 壁深達度の評価ができない
T0 癌を認めない
Tis 癌が粘膜内にとどまり、粘膜下層に及んでいない
T1 癌が粘膜下層までにとどまり、固有筋層に及んでいない
T1a 癌が粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が 1000μm 未満である
T1b 癌が粘膜下層までにとどまり、浸潤距離が 1000μm 以上であるが固有筋層に及んでいない
T2 癌が固有筋層まで浸潤し、これを越えていない
T3 癌が固有筋層を越えて浸潤している
漿膜を有する部位では癌が漿膜下層までにとどまる
漿膜を有しない部位では癌が外膜までにとどまる
T4a 癌が漿膜表面に接しているか、またはこれを破って腹腔に露出している
T4b 癌が直接他臓器に浸潤している
リンパ節に転移しているか(N因子)
リンパ節転移(N因子)について解説します。大腸には必ずその領域を栄養する血管(支配動脈)が存在し、その血管に沿う形でリンパ節が存在します。大腸がんは腸管近傍のリンパ節に転移を来すことが知られており、N因子はリンパ節転移の有無と転移数で分類されます。
図2:大腸がん周囲のリンパ節
NX リンパ節転移の程度が不明である
N0 リンパ節転移を認めない
N1 腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が 3個以下
N1a 転移個数が1個
N1b 転移個数が2から3個
N2 腸管傍リンパ節と中間リンパ節の転移総数が 4 個以上
N2a 転移個数が4から6個
N2b 転移個数が7個以上
N3 主リンパ節に転移を認める。下部直腸癌では主リンパ節および/または側方リンパ節に転移を認める
リンパ節転移の有無はCT、MRIの画像所見から予測できますが最終的には手術で切除したリンパ節を顕微鏡で検査する病理検査で確定診断となります。
他の臓器に転移しているか(M因子)
遠隔転移(M因子)について解説します。がんはそれが生じた場所(原発巣)で大きくなるという性質を持ちますが、リンパの流れや血流の流れに乗って他の臓器へ「転移」する性質も持ち合わせます。大腸がんの場合、腫瘍が腸管の壁を越えて進展する場合は、腫瘍が直接他の臓器へ「浸潤」したり、腫瘍細胞が腹腔内へ広がることで「腹膜播種」を来すことがあります。
図3:大腸がん転移の流れ
M0 遠隔転移を認めない
M1 遠隔転移を認める
M1a 1臓器に遠隔転移を認める(腹膜転移は除く)
M1b 2臓器以上に遠隔転移を認める(腹膜転移は除く)
M1c 腹膜転移を認める
M1c1 腹膜転移のみを認める
M1c2 腹膜転移およびその他の遠隔転移を認める
ステージ別の生存率
がんの壁深達度(T因子)、リンパ節転移(N因子)、遠隔転移(M因子)の3つの因子を組み合わせてステージを決定します。
がんの予後指標として、診断から5年後に生存している割合を示す「5年生存率」が用いられます。各ステージおよび発生部位別の5年生存率は以下の通りです。