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お腹を切らずに治療できる大腸がんがあります早期大腸がんの低侵襲な内視鏡治療
早期大腸がんは、大腸カメラの検査の時と同じように肛門から内視鏡を挿入して病変を切除する事で、治すことが出来るものも多くあります。
早期大腸がんってなに?
大腸がんが早期かどうかは、基本的に病変の根の深さ(深達度といいます)によって決まります。
大腸は、表面に粘膜があり、外側は筋肉になっています。粘膜と筋層の間には脂肪があり、これを「粘膜下層(ねんまくかそう)」と言います。
根が進む程度が粘膜下層までの大腸がんを早期大腸がんと呼び、多くの場合内視鏡で切除することが可能です。(図1)
図1 大腸がんの深達度
Tis | 早期がん | がんが粘膜(M)内にとどまる |
---|---|---|
T1 | がんが粘膜下層(SM)にとどまる | |
T2 | がんが固有筋層(MP)にとどまる | |
T3 | がんが固有筋層を超えているが漿膜下層(SS:漿膜がある部分)または外膜(A:漿膜がない部分)までにとどまる | |
T4a | がんが漿膜(SE)を超えた深さに達する | |
T4b | がんが大腸周囲の多臓器までに達する |
この図でいうと、Tis、T1、T2・・・と大腸がんの根は深くなっていき、T2よりも深い(深達度が深い)大腸がんを進行がん、TisとT1を早期がんと呼びます。
粘膜内、あるいは粘膜下層への軽度な浸潤(1mm未満)に留まる早期大腸がんは、内視鏡的に切除することにより「根治」が期待できます。
大腸がんのステージってなに?
がんの「ステージ」とは病期ともよばれ、がんの進行の程度をあわらしています。
ステージは、早期がんか、進行がんか、リンパ節転移を生じたか、大腸以外の内臓・臓器にもがんが進行した(転移・浸潤した)状態か、に大きく分けられています。
大腸がんは、がんの進行の程度や体の状態などから検討し治療方針が決まります。
大腸がん治療の目安のひとつとして、「大腸がん治療ガイドライン」や「がん情報サービス」があります。(図2)
図2 大腸がんの治療選択 がん情報サービス〇より引用
早期大腸がんの内治療の種類
実際に早期大腸がんを内視鏡で切除する方法はいくつかあります。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ねんまくかそうはくりじゅつ:ESD)
などです。いずれも保険診療です。
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)
内視鏡的粘膜下層剥離離術(ねんまくかそうはくりじゅつ)は英語の頭文字をとってESDとも呼ばれています。この内視鏡を用いてがんを切除するESDという方法は、国立がん研究センター中央病院で開発された方法です。
ESDは2cm以上の大きな早期大腸がんを切除するときや、早期大腸がんの形が平べったく、他の方法では完全切除が難しいと考えられる場合に適しています。当施設でも、多くの医師(内視鏡指導医・内視鏡専門医)が圧倒的な症例数の早期大腸がんESD症例を経験、その知見を有しており、さらには日々研鑽を積んでいます。
ESDを行う場合、入院が必要です。入院は基本的に4泊5日になります。盲腸など炎症が起こりやすい場所の場合、5泊6日になることもあります。
ESDでは、偶発症(ESDに伴う有害な事象)として、出血や腸の壁に穴が開いてしまう穿孔(せんこう)が生じてしまうことがあります。このような場合はさらに入院期間は長くなります。
ESDの具体的な方法
ESDでは、まず大腸カメラでがんの周辺と病変下部に、がんを浮きあがらせるために、生理食塩水やヒアルロン酸ナトリウムの注射を行います。がんが十分に浮き上がった後、がんの周りを電気メスで少しずつ切除します。その後、がんの取り残しがないように粘膜下層をはぎ取り(剥離し)ます。(図3)
図3 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) がん情報サービス〇より引用
当院で行った実際の手術映像を紹介していますのでご覧ください。
盲腸早期がんに対するESD(白黒映像)
直腸全周性早期がんに対するESD(白黒映像)
内視鏡的粘膜切除術(EMR)
EMRは、2cmよりも小さい病変に対して最も良く行われる切除方法です。EMRは多くの場合、日帰り手術で行うことが可能です。一部の病変では技術的に難しいことがあり、その場合には3泊4日の入院になることがあります。EMRは病変に茎がなく、盛り上がりがなだらかな場合に多く用いられます。スネアと呼ばれる輪状の細いワイヤーをかけ、病変を絞め付けながら高周波電流で焼き切ります。このような病変は、スネアが掛けにくいため、病変の下に生理食塩水などを注入してから、病変の周囲の正常な粘膜を含めて切り取ります(図4)。
図4 内視鏡的粘膜切除術(EMR)がん情報サービス〇より引用
内視鏡的ポリープ切除術(ポリペクトミー)
ポリペクトミーも、日帰り手術で行うことが可能な内視鏡治療法です。主に、キノコのような形に盛り上がった茎がある病変に対して行われます。 内視鏡の先端からスネアを出し、スネアを茎に掛けて病変を絞め付けて、高周波電流で焼き切ります。
最近では高周波を用いないで、そのままスネアで切り取る「コールドポリペクトミー」という方法も行われています。
次のステップのために MIRAIプロジェクトのご紹介
これまでに紹介したように内視鏡でがんを直すためには、がんの早期発見がなにより重要です。
定期検診や精密検査の受診をより高いレベルで行うため、また、内視鏡機器や技術をより発展させるための努力の一環として中央病院ではMIRAIプロジェクトに取り組んでいます。