研究について
病理診断科では診断に直結する外科病理学的研究も積極的に行っており、研究所、臨床各科および他施設との研究協力も積極的に行われています。2024年度における研究活動を以下に要約します。
肝胆膵腫瘍部門
肝内胆管がんの外科切除約200症例の検討から、small duct typeとlarge duct typeを臨床病理学的に比較検討し、後者が有意に予後不良であること、また特徴的な肝門部進展様式を明らかにした。肝内胆管がんのsmall duct typeとlarge duct typeとを感度・特異度ともに高く鑑別可能な免疫染色マーカーを新たに開発し、既存マーカーでの鑑別困難な症例においても適切に鑑別可能であること、EUS-FNA/B検体での診断にも有用であることを報告した。
頭頸部・眼腫瘍部門
ICCR(International Collaboration on Cancer Report),Carcinoma of Oral cavityに参画し2版の作成に携わった。再発/転移性頭頸部扁平上皮癌に対する抗PD-1抗体単剤療法の短期的効果は、CPS陽性例で良好な傾向を示し、TPSは抗PD-1抗体単剤療法の効果が得られにくい集団を予測する指標となり得ることを報告した。 眼窩に形成されたPerivascular epithelioid cell tumors(PEComas)のZC3H4::TFE3 を初めてそして PRCC::TFE3 癒合遺伝子については2例目として、それぞれの良悪性の病理学的評価について報告した。41例の唾液腺腫瘍にたいする当センターが開発に携わった針生検システムによる評価とその正確性について報告した。
婦人科腫瘍部門
子宮体癌の切除材と生検材における分子分類の良好なconcordance、本邦150例の子宮 癌肉腫の臨床病理学的特徴とHER2発現、本邦トランスジェンダー男性における子宮体部病変の特徴、子宮頸癌における免疫微小環境と治療標的発現(TROP2, FRα)、子宮頸部胃型腺癌の腹水細胞診の意義、子宮頸部胃型腺癌の画像特徴、本邦外陰扁平上皮癌のゲノム解析、外陰腸型腺癌のWES解析、Deep angiomyxomaの画像病理相関、卵巣明細胞癌の腫瘍微小環境、卵巣中腎様癌の治療標的、等について論文を発表した。
骨軟部腫瘍部門
CIC再構成肉腫におけるMUC5AC散在性陽性像の診断的意義について報告した。YAP1::TFE3融合を有し、炎症の目立つ紡錘形細胞PEComaの2例を報告し、淡明細胞間質腫瘍との関連を論じた。MN1::TAF3融合を有する小児の軟部腫瘍を報告した。Calcified chondroid mesenchymal neoplasmとして近年提唱された組織像に合致する腫瘍20例を解析し、この概念の分類学的意義や問題点について論じた。
脳腫瘍部門
研究所脳腫瘍連携研究分野と脳脊髄腫瘍科との共同研究で神経膠腫に特化した脳腫瘍パネルを開発した。
乳腺腫瘍部門
術後補助化学療法未実施のトリプルネガティブ乳癌症例における腫瘍浸潤リンパ球の意義について多施設共同研究の結果を報告した。HER2低発現を含む乳癌のHER2診断一致性に関するスコアリングサーベイ結果について報告した。
呼吸器腫瘍部門
肺腺系腫瘍でこれ前に報告されていない前浸潤病変である上皮内腺癌の新たなバリアントについて解析し、報告した。また、これで肝様腺癌として報告された肺癌について検討し、腫瘍の進展や治療による変化によって生じる肝様分化であり、腺癌として独立した疾患単位ではないのではない提言を行った。